《正義を気取るならウソはなし、見て見ぬフリをした代償は?》byリドラー
THE BATMANを観てきました。
ノーラン監督の「ダークナイト」トリロジー以来10年振りのバットマン単独映画ということで期待せずにはいられなかった本作。以下、ネタバレ感想ありますのでまだ未鑑賞のお方はご注意ください。
【THE BATMAN】〜あらすじ〜
優しくもミステリアスな青年ブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は両親殺害の復讐を誓い、悪と敵対する存在“バットマン”になって2年が過ぎた。
ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラー(ポール・ダノ) 彼は犯行の際、必ず“なぞなぞ”を残し、警察や世界一優秀な探偵のブルースを挑発する。最後のメッセージは「次の犠牲者はバットマン」
彼はいったい何のために犯行を繰り返すのか?そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪…。すべてを奪おうとするリドラーを前に、ついに彼の良心が狂気に変貌していく―。
【感想】
はっきり言います。最狂の病みヒーロー映画すぎて身悶えました(褒め言葉
個人的にマット・リーヴス監督のどこまでもダークな演出のザ・バットマンの世界観、これまでのバットマンの映画のなかで一番好きかもしれない…!!全体の印象としては、サスペンス色がかなり強め。権力者に蔓延る腐敗と陰謀が絡むストーリーがおもしろかった。
♪デーンデデンデーンデーンデデンデーン…というまるでヒーロー映画らしからぬ不穏な重低音のBGMと共に暗闇から現れるバットマンが最高にかっこくてゾクゾクした(ダークヒーローもの好きとしての厨二病の血が騒ぎ始めて導入部分から心持ってかれたよね…っていう
超能力系が多いアメコミヒーローのなかでも(装備がハイテクといえど)生身の身体で肉弾戦をするのがバットマンの魅力なのだけど、今作はバットマン=若きブルースの内に秘める葛藤、復讐心、怒り、人間臭さがより強調されていて、バットマンとしてゴッサムの自警に没頭しつつも一歩間違えば正義感に取り憑かれた怪物になってしまう、その危うさと孤独さに共感せずにはいられなかった。正義と狂気は紙一重なのだと。
ポール・ダノのリドラーはマスクしてないときのほうがサイコ感あって◎そして煽り方が抜群に上手い。バットマンっていつも大変だよね、やたら知能指数の高い愉快犯を相手に戦わなきゃいけないんだから…。
リドラーの犯行の手口がなんとなくあの有名なゾディアック事件の犯人を彷彿とさせるなぁ、なんて思っていたら映画についてのインタビュー記事読んだらやっぱりゾディアック事件からインスパイアされていたらしい。それにしても、ブルースの頭の柔らかさといったら。あなたはなぞなぞ王ですか?
中盤のカーチェイスシーンも大興奮せずにはいられなかった。 バットモービルかっこよすぎ!今回のバットモービルはどことなくモンスター感がある。不気味なエンジン音を立てながら物凄い勢いで追ってくるバットモービルの映像はまるで、スティーヴン・キング原作のホラー、クリスティーンを思い出す。転倒した車の中からペンギン視点での、爆炎をバックに歩み寄るバットマン(コウモリは逆さまから世界を見ている、とここで表現してくれるのが最高)の図も痺れる。
それにしてもジョーカー、ハーレイ・クイン、リドラーといいバットマンのヴィランはどうしてこうも魅力的なのか…(Mr.フリーズとかは置いといて
リドラーにとっての復讐。ゴッサム再開発の資金が権力者や金の亡者の手に渡ってしまったこと、彼の口から語られる《本当の意味での孤児》、《嘘だらけの世界》の生々しい現実。確かに、ブルースは両親を殺され孤児だったけれど彼の家柄…ウェイン一族はもともと裕福だし、執事のアルフレッドは絶対的な味方でいてくれのだからまだ境遇としてはだいぶ恵まれている。そういう意味ではリドラーも、ホアキン・フェニックスが演じていたジョーカーも、社会的弱者……決して他人事とは言えない、恵まれない・持たざる境遇の人たちの心の叫びを体現した、この世の中の残酷な格差社会が生み出した哀しきヴィランだ。
ザ・バットマンにおいての、陰のある近づきがたい雰囲気を放つロバート・パティンソンのブルース(あまり大富豪感がなく終始笑顔ゼロ)がどストライクすぎて。マジでヤバいよね、あの暗くて病んだ瞳…(笑)ハリウッド俳優ってやっぱ凄いわ。バットマンver.での色気もたまらん。ロバート・パティンソンのバットマンはシルエットも大変美しい。造形美。
…今はただただ、ロバート・パティンソンのことしか考えられない。
アーカム精神病院の独房で計画の失敗を嘆くリドラーに話しかける謎の男、会話中に“ピエロ”という単語出てきたのもあって、あぁ、ジョーカー出てきたなー、と。続編ではもしかするとリドラーとジョーカーのタッグが見れる可能性もある。楽しみ。
ザ・バットマンにおいてただひとつ、残念だったのがゾーイ・クラヴィッツ演じるキャットウーマンが被っていた猫耳のあれが安っぽい(あれ、ほっかむりっていうんだっけ…?)にしか見えなくて…。衣装担当の人、あのデザインもっとどうにかならなかったのか?(正直ダークナイトのアン・ハサウェイよりもゾーイ・クラヴィッツのほうが容姿は好きなんだけどね…
挿入歌の、ニルヴァーナの『Something In The Way』がとてもいい味を出してた。今は亡きカート・コバーンの、どこか退廃的な歌声がザ・バットマンの世界観によく合っていると思う。
観賞後数日経ったけど全然映画の余韻が抜けない。まだしばらくは、ゴッサムの闇に浸っていたい…。