トネリコの憂鬱

つつましやかに暮らしを綴る。好きなものを語る。時々、毒も吐く。地方住みアラサーの日々。映画と漫画がないと生きられない人生。

ミッドサマー

 

 Amazonプライムで期間限定配信されている【ミッドサマー】を鑑賞。

【ヘレディタリー/継承】のアリ・アスター監督のフェスティバル・スリラー。


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 物語は、主人公・ダニーの妹が両親を巻き込み自殺するところから始まる(この時点でもうすでに鬱屈としている)最愛の家族を失ってしまったダニーの絶望は計り知れない。そんなダニーと1年前から別れたがっている彼氏は、しかしダニーに別れ話を切り出すのを躊躇していた。その後、大学で民俗学を研究する彼氏ととその友人5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖......それは想像を絶する悪夢の始まりだった…。というのが大まかなストーリー。

 

…なんかね、別れる直前のカップルの気まずい空気感がやけに上手い具合に描かれていたし、ダニーの鬱状態の時や情緒不安定さに共感してしまった。

他の多くの方のレビューでもあった意見だけど、ミッドサマーはメンタル弱ってる時は鑑賞をおすすめしない;

人里離れた北欧の村での土着信仰と村社会の恐ろしさをまざまざと見せつけられた147分間は、耳について離れない不協和音、カメラワークや演出の気色悪さも相まってただただひたすら不快な映画だった。人の泣き叫ぶ声や唸り声なんかもすごくリアルでかなりしんどい。映画館で観ていたら軽くトラウマになっていたかも。

祝祭の最中に「アッテストゥパン」という儀式があって、これは72歳になった老人が崖から飛び降りて命を絶つものなんだけど、本人達にとってはさも当たり前の風習らしく(むしろ名誉のように感じている)何の抵抗もなく運命を受け入れている。部外者にとっては異常な光景かもしれないが。

あと、村の女の子が意中の相手の気を引くおまじないで、陰毛入りのパイを食べさせたり経血入りジュースを飲ませようとしたりと、これだけ書くとただの変態映画のように聞こえるけど結局はこの祝祭は子孫繁栄のためのお祭りであって(外部の成人男性から子種をもらう)村の人にとってはこれが常識なんだよね(こんな異文化交流は絶対嫌だけどなw

映画の後半で主人公の彼氏が薬で朦朧とした意識の中、村の女の子と子づくりのためのセックスをするシーンがある。セックス中に村の女性たちが全裸で手を繋いで周りを囲みアーアー言ってるのはシリアスな場面なはずなのにギャグとしか思えなかった。

しかしながら伏線回収も巧妙だし、色んな意味で計算し尽された凄い演出なのは脱帽。内容的にも大満足。

狂気の祝宴の先、生きながら燃やされる彼氏を見て全てを吹っ切れたダニーの笑顔を持ってくる辺り、アリ・アスター監督の凄みを見た気がする。【ヘレディタリー/継承】でも感じたけど、この監督はカルト教にトラウマでもあるのかな…?アリ・アスター監督にはこれからも斬新なホラー映画を世に放ってほしい。


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 ↑デザイナーの大島依提亜さんとヒグチユウコさんが手がけた日本限定のミッドサマーのアートポスターが素敵。

 


2020.2.21(金)公開『ミッドサマー』予告編