トネリコの憂鬱

つつましやかに暮らしを綴る。好きなものを語る。時々、毒も吐く。地方住みアラサーの日々。映画と漫画がないと生きられない人生。

倉敷

 

 基本的に大晦日や元旦は毎年おうちに籠もってのんびりと過ごすことが多いのだけど、今回初めて正月休みを使っての旅行、というのをしてみた。

倉敷へ、大晦日〜元旦にかけて1泊2日での小旅行。今月で彼と付き合って3年、の記念も兼ねて。わたしは普段、土日出勤が多いので正月休みは彼と数日間休みが被る貴重な機会でもあった。そして今回はコロナ禍になって以来久々の、県外旅行だ。わたしの職場は未だにコロナ対策がとても厳しい。『いつになったらまともに旅行できるのだろう…?』とひたすら踏ん張り続けて、よくここまで耐えてこれたなぁ、と自分を褒めたたえたい。十分すぎるほど頑張って自粛してきたよ。もうこれ以上、見てみたい景色を見ることを、行ってみたい場所に行くことを我慢したくない。

 

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 朝の倉敷駅周辺。時計台の四方を取り囲むようにバイキングの像がいた。

 

 朝の5時半に車で出発、9時前くらいに倉敷に到着。

軽く朝食を済ませ、目的地である美観地区を散策した。同じ中国地方に住んでいても、倉敷をちゃんと観光するのは初めてだ(けれど幼い頃に2回ほど、家族でチボリ公園には遊びに行ったことがある。デンマークアンデルセン童話をテーマにした遊園地で、可愛くて好きなだったなぁ。もう10年以上も前に閉園してしまったから残念

 倉敷川沿いの柳並木に、レトロで趣のある景観。美観地区は江戸時代~明治時代の風情が色濃く残されており、歴史的建造物や多くの白壁の屋敷が並ぶ、とてもお洒落で美しい街だった。


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 こんな大晦日でも雪も降らず雲の隙間から時折青空が見えたりして。さすが晴れの国、岡山。山陰と山陽の違いだ。写真を撮った時間帯はまだ人がまばらだったのに、昼前には歩道は観光客でいっぱいに。和と洋が絶妙にミックスした素敵な雑貨屋にお土産屋、ギャラリー、カフェ、レストランも多かった。


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 今回の小旅行のメインといっていい、ずっと行ってみたかった大原美術館。日本最古の西洋美術中心の私立美術館だ。まるでギリシャ神殿のような大きな柱とその荘厳な外観は、さながらヨーロッパの美術館のよう。


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 わたしはアートに特段詳しいわけではないけれど、アート鑑賞と美術館という場所が大好きだ。エル・グレコの【受胎告知】、モネの【睡蓮】、ピカソの【鳥籠】、ゴーギャンの【かぐわしき大地】…生で見る本物の絵画に感動せずにはいられなかった。時代を越えて妖しい魅力を放つ絵画たちのパワーに、恍惚としてしまった。

 ゴーギャンについては事前にAmazonプライムで、ヴァンサン・カッセル主演の【ゴーギャン タヒチ、楽園への旅】という映画を観ていたから感慨深かった。『お前の絵は殴り書きだ』などと酷評され作品が売れず行き場を失っていたゴーギャンが、妻子を捨てて新天地を求め南国タヒチに旅立ち、その地で創作活動をする愛と苦悩の日々を描いた映画だった。楽園のような生活をするもすぐに資金が底をつき、貧窮のなかで制作された【かぐわしき大地】…アート鑑賞といっても、作者の背景を大まかに知っていると(それも、全てではないので想像力を働かせて楽しむ部分もあるのだけど)、鑑賞時の気分がまたずいぶんと違ってくるものだ。

 それにしても、画家も含め、あらゆる偉大な芸術家(クリエイターと名のつく者)は総じて孤独な生き方しかできないんだな、としみじみ思う。孤独だからこそ素晴らしいものが完成するのだろうけど。


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 上の写真は大原美術館で展示してあった絵画で特にお気に入りのもの。右からムンクの【マドンナ】のポストカード、児島虎次郎の【睡れる幼きモデル】のクリアファイル。ムンクの【マドンナ】はどこか不穏で神秘的な雰囲気のある絵だったので、一目で気に入ってしまった。児島虎次郎の【睡れる幼きモデル】はワンピースを着た、うたた寝する幼女の柔らかな寝顔が愛らしい。


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 美観地区を歩いていると突如現れた【mt】の看板。あれ、あのマステのmt…?と思ってその場で調べてみれば、なんと。今まで知らなかったのだけど、マスキングテープってもともと倉敷が発祥の地なんだとか。それで、ここはそのmtの専門店【TANE】だったようです。わくわくしながら店内へ入ると、ありとあらゆる柄のmtのマステが店内の棚にぎっしり販売されていて、その数は約1,200種類(!)にも及ぶとのこと。こんな幅広なマステが存在してたの!?と驚くほどのサイズ感のものまであり、まるでマステの宝石箱みたいな空間だった。マステってそんなに頻繁に使うわけでもないのに、可愛くて安価だからつい欲しくなってしまう。


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 おまけ。美観地区内のアイビースクエアへ向かう途中に偶然見つけた、骨董品屋。屋根に狂気を感じる。こういうおもしろいものを発見できるから、街歩きというのは愉しいのよね。