トネリコの憂鬱

つつましやかに暮らしを綴る。好きなものを語る。時々、毒も吐く。地方住みアラサーの日々。映画と漫画がないと生きられない人生。

滅亡映画のススメ

 

 地球や人類の危機を描いたパニック映画や終末映画は世に多く存在する。

メジャーな作品の例でいえばアルマゲドンのようにドラマチック+感動的なものや、デイ・アフター・トゥモローのような希望のあるラストだったり。

しかしそれでも私は作品において、地球規模の危機を回避できずに滅亡してしまう系の映画(バッドエンド)も割と好きだったりする。

なぜ突然こんな話をするかというと、最近観たNetflixオリジナル映画の【ドント・ルック・アップ】がまさにその”滅亡してしまう系”だったから(自分のお気に入り滅亡映画リストに見事に追加されました

 

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 【ドント・ルック・アップ】~あらすじ~

 天文学専攻のランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)は落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)とともに地球衝突の恐れがある全長10㎞もの巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。

仲間の協力も得て、オーリアン大統領(メリル・ストリープ)と、彼女の息子であり補佐官のジェイソン(ジョナ・ヒル)と対面したり、陽気な司会者ブリー(ケイト・ブランシェット)によるテレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけるが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。果たして2人は手遅れになる前に彗星衝突の危機から地球を救うことが出来るのか…!?

 

 滅亡系の映画は大体シリアスorどストレートな感動系のパターンが多いけど、【ドント・ルック・アップ】は全体を通してブラック・ユーモア溢れる風刺映画だった。

笑ってしまうくらい超豪華な、主役級の俳優ばかりのキャスト(ちょい役でさえ)…主演のレオ様のうだうだした感じの演技がなんともたまらない。

優秀な科学者がどんなに必死に危機を訴えようとまともに取り合ってくれない政府や、いい加減な情報ばかり出回るSNS、株価の暴落、分断される社会、迫りくる彗星の物質を採取してあたかも金儲けに利用しようと企てる人達など…。実際にこんなとんでもない試練が起きればこういう行動をする奴らがいるんだろうなと、その辺の描き方が上手い。

 後半、私利私欲にまみれた大人たちのせいで彗星の破壊は失敗してしまい、彗星衝突まで残り数時間、といったところで我先にと冷凍催眠装置つきのシャトルで早々と地球脱出する富裕層がいて、残された大半の人間はただただ地球の滅亡を待つしかなく…といった様がまるでこの世界のリアルな構図を表しているよう。結局、助かるのは一握りの金持ちだけなのか。

自分たちはもうすぐ死んでしまうのだ、と悟った人々の残りわずかな時間の各々の過ごしかたがとても考えさせられる。ヤケになって暴動を起こしたり、酒に溺れる者、祈る者、本能の赴くままに集団でセックスする者、家族やパートナー、ペット、友人と他愛ないひと時を過ごす者…。

主人公ランドルは上流階級の人間から「あなたと奥さんの分だけなら脱出シャトルの席を用意できる」と誘われるもそれを断り、地球に残ることを選ぶ。終焉を迎える前、愛する家族や友人、知人らと共に過ごし談笑しながら美味しそうな料理の並べられた食卓を囲み、「自分たちがこれまでどれほど人生を楽しんでいたか」を語り合い最後の晩餐をするシーンが切なかった。

ラストでは地球が滅亡して2万年以上経過し、上流階級が乗った脱出シャトルが地球とよく似た自然豊かな別の惑星に辿り着く。冷凍保存から目覚めた人々がその地に降り立つも、その星にもともと生息していた鳥と恐竜を足して2で割ったような生物に襲われて食べられてしまう、というなんとも皮肉なオチだったのがまた良かった。皮肉も突き抜けるとおもしろいよね。

 ちなみにエンドロール後おまけ映像があるので最後まで鑑賞されることをおすすめします。

 


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 個人的おすすめしたい滅亡映画その②

キーラ・ナイトレイ主演【エンド・オブ・ザ・ワールド

 小惑星衝突による地球滅亡が迫っている中で妻の不貞を知った男が、隣人の女性を道連れにして真の愛を探る旅に出る話。

キーラ・ナイトレイが可愛いしロマンス色強めでハートフルな内容なので、比較的ハッピーエンド寄りな滅亡映画だよー。

 


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個人的おすすめしたい滅亡映画その③

キルスティン・ダンスト主演【メランコリア

 小惑星との衝突を目前に控え、残り時間の少ない地球を舞台に、鬱病を患う花嫁と彼女を取り巻く人々の人間模様を描いた話。

稀代の変態監督、ラース・フォン・トリアーの映画でいちばん好きな作品。トリアー作品なので病んでるのは大前提で、これぞ滅亡映画の最高峰だと勝手に思ってたりする。この孤独と鬱積に押し潰されそうな内容はけっして万人受けとするとは言えないのに、ラストの迫りくる惑星・メランコリアの荘厳かつ神秘的で美しい映像は圧巻。もはや芸術の域。そして鑑賞後は夢も希望もなく、虚無しか残らない。

…世界が終わることで絶望から解放されて救われる人間だっているんです。

 


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 滅亡映画を鑑賞するたびに思うのだけど、もしあと数日で地球が滅亡するかもしれない状況が来たとしたら、自分はどんな心境で日常を送るのだろう、残されたわずかな時間で何をやりたいんだろう…?と、考えずにはいられない。

迫りくる死への恐怖で精神的にパニックに陥るか、自暴自棄になるか。それともいっそ開き直って、楽しさと快楽を追求するか。ただひとつ言えることは…自分はひとりの時間は好きだけど、地球が滅亡を迎えるその瞬間は、ひとりで過ごすのなんて怖すぎてとても耐えられそうにない。

 どれだけ感謝を伝えても伝えきれない自分がほんとうに好きな人たちと共に、美味しいものでも食べながら、穏やかに過ごせたらいいのに。

 

 …もしも明日地球が滅びるとしたら、あなたは何をしたいですか?